稲のひこばえ

 蘖(ひこばえ)とは、樹木の切り株や根元から生えてくる若芽のことです。
 もとの樹木を親に、細い若芽を孫(ひこ)に見立てて「ひこばえ(孫生え)」。
 樹木では春から夏にかけて多く見られるからか、俳句では春の季語となっています。

 刈り取った稲の株から生える、新たな芽もひこばえと呼んでいます。暖かい地域では、強い霜が来るまでの間にひこばえが成長してわずかながら実もなります。

 天明七年(1787年)にしるされた土佐の農業書「続物紛(ぞく もののまぎれ)」には
「ひつち(稲のひこばえ)」について書かれています。
 「結実させず刈って干せば牛馬の飼料としてよい」、「もち米のひこばえは結実させ、粉にして寒ざらしにすると薬になる」とあります。

 今はこのようにひこばえを利用することがなくなり、初冬に青々としたひこばえが野生動物の餌になることから、野生動物を人里に呼び寄せ、それが鳥獣被害につながると言われています。
 くらし方の変化が思いもよらない問題を起こしています。

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