青蜜柑

みかん

 日本には柑橘の仲間がたくさんあります。
 その中でもふつう「みかん」と呼ばれるのは「温州みかん(うんしゅうみかん)」。みかんの産地である中国の温州にちなんでウンシュウミカンと命名されたようですが、実際は日本の鹿児島県(不知火海沿岸)原産と推定されています。

 『古事記』『日本書紀』に、垂仁天皇の御世、天皇の命で常世の国に遣わされた田道間守(たじまもり)が非時香菓(ときじくのかくのみ)の実と枝を持ち帰り、その非時香菓とは今の橘であるとされます。この「橘」はオオタチバナであるともダイダイとも小ミカン(キシュウミカン)であるとも言われ確定はされていません。
 その後もキンカンやコウジ(ウスカワミカン)といった様々な柑橘が中国からもたらされました。いずれも食用としてよりも薬用としてであったらしく、めでたい長寿につながる果実のイメージは柑橘の香りをまとっているのです。

 今朝の街路市でも青い温州みかんが真っ盛り。
 「青蜜柑」というと運動会を思い出すのは昭和の世代だから?今は温室ミカンが初夏から出回りますが、当時はそのようなものはなくて、運動会のころがちょうど蜜柑の出始め。酸っぱい青みかんが嬉しかったものです。

 そのころは山の小学校では我が子を応援に来た家族とはちまき姿の小学生が一緒にお弁当を食べるという習慣で、校庭のあちこちでお弁当と青蜜柑の皮の香りがただよっていました。
 プルーストのマドレーヌならぬ青蜜柑の香りに目を閉じると、青空にはためく万国旗、スピーカーの割れた音楽、子どもの声、土と石灰のラインの匂いまで鮮やかによみがえります。昔がただ懐かしいというだけでなく、あのころとても豊かな時間があったのだと思います。

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